手引き書の類
世界
死者の国ヘヴンズゲート。生者の国――名は誰も知りません――で『死』を迎え肉体を失った魂はこの世界に辿り着きます。
彼らはこのヘヴンズゲートを含む9つの高次世界を渡り、再び生者の国へ戻ると言われています。
生者の国からこのヘヴンズゲートへ来る手段は『死』で、肉体を失うことになります。
そして、ヘヴンズゲートから高次世界へ行く手段が『滅』であり、魂を失うことです。
魂を失った彼らは『心』を残し、次の高次世界へ旅立つことになります。
次の高次世界は『心』の国と言われていますが、詳しいことは分かりません。
魂は肉の記憶を持つため(個体としての記憶は引き継ぎません)、肉体に似た性質を持ちます。
そのため、ダメージを負うことで魂も壊れてしまいます。
世界との摩擦により劣化し、他の魂との衝突により傷を負います。それらが魂としての強度限界を超えたとき、魂殻は崩壊を始めます。
魂殻の内側には『心』があり、魂殻の崩壊によって解き放たれます。
解き放たれた心は次の高次世界に行きますが、ここではあまり関係ありません。
魂殻の自然崩壊は緩慢で、少しずつ魂は壊れていきます。
壊れ始めた魂は狂気に彩られ、秩序を失い、いろいろおかしな行動を取るようになります。
困りました。すごい迷惑です。引っ越し引っ越し叫びます。糞尿投げます。
しかし、速やかに魂殻を破壊し心の解放を行う能力、そしてそれを行使する者がいました。
その能力を『魂滅』と呼び、『魂滅』の力を持つ者を天使、あるいは死神と呼びました。
彼らがいつから存在するのか、なぜ存在するのかはよく分かっていません。
世界の持つ性質上、システムの一つとして彼らのような存在が必要であるので生まれた――
そのようにも言われていますが、結局分かりません。
本人たちも知らないし、あまりそれを疑問には思っていません。
ともあれ、天使と死神。彼らは『魂滅』の力を行使する特別な存在です。
世界のどこかで発生し、役目をこなし、傷つくなどして一般の魂と同じように滅びます。
しかし彼らの魂殻の中に潜む心は高次世界に行けないため、そのまま世界に残りふらふらと漂ってから再び魂殻をまとって転生します。
個体としての記憶は魂殻の崩壊によって消えてしまい、新しい私としてまた役目をこなします。
また彼らには集団や組織、社会と言った概念がなく、もっぱら個人主義者です。
これは、最小単位である家族という形がそもそもないためだと言われています。
中には、そういうのに憧れているものもいるようです。
ヘヴンズゲートには、肉体を失った様々な魂が暮らしています。
動物や植物、人間とかなんだかよく分からないナマモノとかです。
コミュニティを作ったり作らなかったりしながら、のほほんと暮らしています。
魂を噛み砕き、飲み下す――『魂喰』の力を持つ者。
いつの頃からかヘヴンズゲートに現れ、ソウルイーターと呼ばれるようになりました。
彼らのことは謎に包まれており、判明しているのは『魂滅』と似た力を持つということだけです。
しかし彼らソウルイーターの力は『魂滅』とは決定的に違い、高次世界へ旅立つことを許しません。
魂を噛み砕き、飲み下し、そのまま中身ごと消化してしまいます。
食事のつもりのようです。
世界をぶらぶらしながら適当に食べ散らかしています。
また、彼らは非常に好戦的で、『魂滅』の力を持つ者たちに強い敵愾心を持っています。
『魂滅』した魂は高次世界に移動するため、この世界からは完全に消滅してしまいます。
しかし、まれにですがその欠片が残ってしまうことがあります。
それは『魂片(ソウルドロップ)』と呼ばれています。
魂の持っていたエネルギーの一部がうまく昇華されず、物質化してしまったと言われています。
そのため、『魂片』は元となった魂の力を秘めています。
ちなみに、『ソウルイーター』は『魂片』が大好物のようです。